2011年5月6日金曜日

お客を引き付ける“店長力”の秘密

 あなたには“行きつけのお店”があるだろうか? 居酒屋でもカフェでもレストランでも、美容室やブティックでも「あの店長がいるから」リピートする。そんなお店があるだろう。

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 店長の魅力って何なのだろう? そんな疑問を持って、昼間から赤坂、そして新宿へハシゴして“店長力”を探った。良いキモチになった。お酒で酔っちゃいない。2人の女性店長のお話に酔ったのだ。酔いがさめないうちにお伝えしよう。【郷好文,Business Media 誠]】

●名前のある常連さんを作る

 「店長になったら何をしたいと思いました?」

 「カジュアルダイニング KICHIRI 赤坂」の店長、田代香織さんに尋ねた。

 「“常連さん”ではなくて、お客さま1人1人のお名前を覚えます」

 田代さんは4年前に株式会社きちりに入社し、2009年4月に赤坂店の店長となった。その時、改めて赤坂という街を見渡した。渋谷や新宿と違って人が集まる場所ではない。ここで生活し、仕事をする人が多い。“常連さん”を大切にしよう。

 そう気付いて、ホテルのドアマンのようにお客さまの“心のドア”を開き、美容室で女性が自分をさらけだすように“気持ちよく語る”おもてなしを心がけた。やさしい眼差しの奧で「もっとこうしたら喜んでいただける、楽しんでもらえる」をいつも考えている。何人のお客さまの名前を覚えているのか。

 「ちょっと前に書き出したら30人以上でした。今では50人弱くらい」

 「どうやって覚えるんですか?」

 「お座りになったお席、お顔を覚え、お話をうかがいます」

 いつも手にする革の手帖に、顔と名前のある常連さんが詰まっている。

●人に感動する

 田代さんの店長力はスタッフにも及ぶ。彼女は状況次第でキッチンにも立ち(サラダからデザートまですべてこなす)、ホールと調理場のスタッフの壁のない1つの店を目指す。アルバイトにも「何をしたいか」を定期的に聞いて、こんな助言もする。

 「自信を持って、立ち向かいなさい」

 人は不安な人から買わない。自信を持って「これがいい」と勧める人から買う。だからスタッフには人間力を磨いてほしい。「人にふれあい、人に感謝し、人に感動する」と書かれたKICHIRIのクレドカードを出しながら、エピソードを語った。

 「母の日に家族で食事にいらしたお客さまがいました。その家族の温かい姿に感動して、もらい泣きしたアルバイトの男の子がいたんです。お客さまも感動されて、私も感動してしまって……」

 ふれあい、感謝まではしつけだ。でも、感動は人間性だ。そのシーンを創るのは店長力なのである。

●厳しい時代だから店長を応援しよう

 今回取材した2つのお店は、店長の応援サイト「店長.jp」から選んだ。クーポン情報誌「クーポンランド」を発行するサイファが、商売が冬の時代に、何とか店長を応援しようという想いから立ち上げたWebサイトだ。

 「不況でお店の集客がどんどん落ちてます。サービスも低下、閉店も多い。広告費はもちろんクーポン費もカット。店舗を応援するメディアとして何かできないかというのがきっかけです」(サイファ メディア統括本部事業企画室長の佐野寿さん)

 そこで佐野さんが考えたのが“店長の応援”。店長情報を店長.jpで紹介し、“店長カード”を店舗に配り、「誰でも店長カードがもらえる」と告知する。もらったお客が次回の来店でカードを渡すと、秘密のプレゼントが渡されるというもの。これによって、店長とお客さまのコミュニケーションが深まるというわけだ。

 「店長.jpへの告知は無料です。クーポンランド本誌の掲載料も割り引きます。割引分を店長プレゼント、例えば一品料理にして、リピーターに差し上げてくださいという仕組みです」(佐野さん)

 クーポンランド誌に「店長プレゼント印」があるのが目印。お礼として、Twitterで店長へ応援メッセージを送ることもできる。次に紹介する韓国屋台炭火焼き「豚お姉(トンオネエ)」では、毎月の配布数500枚で不足するほど活用している。

●トラブル客にも愛を注ぐ

 「店の経営は自分の腕次第。苦しくても頑張れば成果が出るのが楽しい」

 引き込まれる笑顔、快活な話しぶり、芯のある強さ。「このお店が繁盛しないわけがない」と、韓国屋台炭火焼き「豚お姉(トンオネエ)」の店長、許允煕(ホ?ユンヒ)さんに会ってピンときた。オーナー兼店長の許さんのお店では、ジューシーで甘いと定評のある平田牧場の三元豚がウリ。通常の焼肉豚より仕入れは5割も高い。だが利益を削って市場価格で提供する。なぜですか?

 「愛があるから。料理もお客さまにも仕事にも、愛を込める。トラブル客も愛しているから許します」

 ある時、酔ったお客が「トイレから使用者が出て来ない」と怒鳴った。許店長は笑顔で「1つしかないウチのお店が悪いの。許してね」と言って、納得してもらった。彼女の母は韓国で有名な食堂を営む。店ではお酒を1人1本までしか出さない。なぜなら「酔うと人は悪くなる」から(笑)。自戒しよう。

●ここが私の生きる場所だ

 韓国から来日して13年。2軒の韓国刺身店を成功させた後、1年前新宿に焼肉店をオープン。毎日お客さまのテーブルを回っては話をする。政治、文化、サッカー、ゴルフ……。何を話したかしっかり覚える。レジの後ろにずらりと並ぶのはお客さまのポラロイド写真。ひと言を添えて貼っている。お客さまがお客さまを呼ぶお店なのである。

 「アルバイトの面接も1時間かけます。『日本になぜ来たの?』『成功したいの?』『夢は何?』と」。面接者には「もしもお店が合わないなら、合わないと先に伝えて」と言う。

 やさしくてひたむきな許店長。その秘密は彼女には夢があるからだ。

 23歳のある夜遅く、日本に着いた。新宿プリンスホテルの高層階に泊まった。見下ろすとネオンがいっぱいだった。許さんは思った。

 「ここが私の生きる場所だ」

 あの日以来、新宿が好きだ。ネオンの明るい夜が好きになった。だから10年以上かけて千葉から浅草を経て、原点の新宿に戻ってきた。ここから豚お姉のお店を100店舗にするために。

 私は店長プレゼントをたっぷりもらった。2人の店長からの“感動と夢のプレゼント”だ。お店の器は店長力で決まる。疲弊した日本の救世主は店長かもしれない。店長.jpにはまだたくさんの“店長物語”が隠れている。みなさん、それを探しにいきませんか?


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引用元:リネージュ2 rmt

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